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11.92022
ショックについて
みなさんはショックという言葉を聞くと、どんな状態を思い浮かべますか?
このショックという言葉、私たち医療に関わっている者たちと一般の方たちで
大きく認識がズレる言葉の一つだと思います。
例えば、
1.行く予定だったライブが仕事の都合で行けなくなった。ショック!!
2.病院に連れて行ったが状態が悪く、触診中にショックで亡くなってしまった。
この、1と2の”ショック”という言葉、意味はまったく違います。
shock(ショック)は元々は英語の単語ですが、もはや日本語でも頻繁に使うため、翻訳でも訳は”ショック”と出てきます。
一応、和訳では衝撃・打撃・一泡などとなります。
1.の”ショック”はこの和訳に近い解釈です。つまり、精神的な衝撃・打撃のことを指します。
いわゆる、「ガーン」や「チーン」です。
これが、一般的に飼主様たちがイメージする”ショック”だと思います。
2.の”ショック”はどうでしょうか?同じでしょうか?
もし同じなら、「ライブに行けないショックで亡くなる」ということが起きてしまいます。(推しのライブに行けなくて、死ぬほど絶望する人もいるとは思いますが…)
実は2.の”ショック”は1.の場合と明確に違います。
2の”ショック”は医療用語の”ショック”です。
医療におけるショックとは、
ショックとは、臓器への酸素の供給量が低下し、生命を脅かす状態で、臓器不全やときには死亡につながります。通常、血圧は低下しています。
つまり、「血圧が低下して、体の酸素が足りなくて死ぬかもしれない状態」のことを指します。これが、医療関係者が仕事で使う”ショック”です。
それをふまえて先ほどの例を見ると、
1.行く予定だったライブが仕事の都合で行けなくなった。精神的な打撃を受けた(ショック)!!
2.病院に連れて行ったが状態が悪く、触診中に血圧が低下して、体の酸素が足りなくて(ショック)亡くなってしまった。
全然違いませんか?
爬虫類が病気になった時に「検査のショックで亡くなるかもしれない」と言われた時は2.のショックです。けっして、「ガーン😨」となって亡くなるわけではないのです。
つまり、「検査する前から死んでしまうかもしれない状態です」、「検査に耐えられない状態です」、「健康であっても検査で亡くなるリスクが高いです」とお伝えしているつもりなのです。
普段私たち医療関係者は”ショック”という言葉の共通認識があるので、お互い使っていても問題は起きないのですが、飼主様とのお話の際に認識のズレが起きることがあります。
特に”ショック”とは亡くなるかもしれない状態なので一刻を争う状態のことも多く、丁寧に説明している時間がない(飼主様と話をするよりも、患者の処置や看護師さんに指示を出すことを優先しなければならない)場合があります。なので、「今、ショックで亡くなってしまうかもしれない状態です。」と伝えてしまうことも多く、
飼主様は「ガーン😨」の状態だと思っており、危機感が伝わりづらいことがあります。
特に、爬虫類を含めたエキゾチックアニマルは犬・猫に比べてこのような状況に陥りやすいため、まず問診・視診からはじめて、触れることで起きうるリスクを想定して(飼主様に説明して)から触診・検査に入ることが大切となります(それでも想定外の急変はあるのですが…)。
店長 兼 獣医師 中嶋 光