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11.182022
便検査(健康状態証明書)
当店では全頭、獣医師による健康状態証明書を発行しております。
検査項目の一つである便検査についてお話させていただきます。
これは当店のポリシーの1つであるため、少し硬い文章になることをお許しください。
便検査は
・便の量・形・色・臭いなどの検査と
・顕微鏡による主に寄生体(細菌・真菌・寄生虫等)の検出
に分かれます。
便検査と呼んではいますが、私たちの様に肛門と尿道に分かれて便・尿を排出するのではなく、総排泄腔という所にまとめてから排泄します。
なので、便と尿・尿酸を分けて検査することは限りなく不可能に近く、
顕微鏡に見えるものが便中の物なのか、尿中の物なのか、または生殖線由来の物なのか判断することは難しいです。
つまり、血便・血尿の区別もはっきりとはつかないのです。そのため、便検査のみで病気の診断をすることはできません。
なので、必ず本人の症状(臨床症状)と照らし合わせながら判断する必要があります。
当店の健康状態証明書で確認することは、
・現在明らかに本人に症状を認めない(本人の状態・便の肉眼所見も特筆すべき点を認めない)
・便中に今後直ちに何か症状を引き起こす様な寄生体は確認できない
となります。
“便中に今後直ちに何か症状を引き起こす様な寄生体が確認できない“と
“便中に寄生体がいない”
はイコールではありません。
本来私たちの便中にも細菌(腸内細菌)は存在します。これは体を正常に保つ役割があるため、必ずいなければならないものです。
爬虫類も同じように腸内細菌は存在し、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)を形成しています。
細菌だけでは無く、一部の爬虫類では寄生虫(原虫類)も共生関係にある可能性があります。そのため、便検査で寄生虫(細菌・原虫類・線虫類・蠕虫類など)を認めても
必ずしも有害と判断できないことも多いです。特に野生個体(WD)であれば原虫・線虫・蠕虫類は、ほぼいるといって良いでしょう。
繁殖個体(CB)であっても駆虫した親からの累代個体でない限り、便中から検出されるでしょう。
また、たくさんいると有害だが、少量であれば無害。爬虫類にとっては有害ではないが、いても得はしない。
という場合もあります。
つまり、
便中には必ず微生物(細菌・原虫類・線虫類・蠕虫類など)は必ず存在する。
寄生体が有害かどうかは便検査だけでは、なかなか判断はつかないということになります。
では、なぜ当店ははっきりと診断がつかない便検査を行うかというと
1.現在、便中にいる寄生体を確認し今後の予測を行う。もし具合が悪くなった際、動物病院に販売時の情報を提供できるようにする
2.いたらほぼ確実にに具合が悪くなる寄生体(クリプトスポリジウム)の多数寄生をなるべく早く検出したい
からです。
1.については、
爬虫類に関しては病気になったら治療するではなく、病気にならない飼い方を行うことが重要となります。
しかし、100%病気を防ぐことは難しく病気になってからだと検査も制限されることが多いため、事前の情報(病気の手がかり)があった方が回復の可能性が高くなります。
また、便中には必ず微生物はいるため、当店は“異常はありませんでした”とは表記いたしません。
“こんな菌がいました。””こんな原虫・オーシスト・虫卵が見られましたが、直ちに症状を引き起こすものではないでしょう。”
などと表記いたします。
2.について
当店では簡易迅速ショ糖浮遊法による検査を行っております。
当店の検査でクリプトスポリジウムの検出が必ずできるわけではありません。
多数寄生の場合には検出できる可能性があります。
クリプトスポリジウムは検出自体が難しく、重篤化すると亡くなってしまいます。
治療法もいまだ確立されていません。そして、周りの個体にも感染します。
また、塩素を含む一般的な消毒薬は効きません。煮沸消毒のみ有効です(クリプトスポリジウムについて)。
ただ、クリプトスポリジウムにかかっても健康体であり免疫力が下がっていない子は一時的な感染で重篤化を起こす可能性は低いと言われています(レオパ等の感受性の高い種は存在する)。
クリプトスポリジウムの感染をしている子をなるべく出さないことが重要と考えているためこのような検査を行っております。
※(2023/2/25改定)
当店の爬虫類は基本的には寄生虫の駆除薬を投与しております。投与前の便検査、投与後の便検査により駆除薬の効果判定を行います。使用した薬剤、便検査の所見を健康状態証明書に記載しお渡しいたします。ただし、あまりに小さな個体(ベビー)に関しては投与を行わない方針です。
便検査の検出限界上、寄生虫の絶対にいないことを約束することは出来ませんが、できる限り寄生虫の感染のリスクを低下させることを目指します。
店長 兼 獣医師 中嶋 光